「万が一のとき、家族の生活はどうなるんだろう…」
「病気やケガで働けなくなったらどうしよう…」
子育て世代の方とお話ししていると、こうした不安の声もよく耳にします。
日本の公的年金には『老後のため』だけでなく、『もしものときに家族や自分を支える仕組み』も用意されています。
それが、「遺族年金」と「障害年金」です。
今回は、この2つの制度について、実際の生活をイメージしながら見ていきましょう。
まずは、遺族年金の事例です。
【事例①:会社員の夫が亡くなった場合】
夫(会社員・年収500万円)
妻(専業主婦)
子ども2人(8歳・5歳)
この場合、
妻と子どもは「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の両方を受け取れる可能性があります。
遺族基礎年金は、子どもがいる配偶者に支給され、
年間約80万円+子どもの加算(2人分)で、
おおよそ年間120万円前後が目安になります(年度により改定あり)
さらに、遺族厚生年金は、夫の収入や加入期間に応じて支給されます。
仮に厚生年金の加入期間が20年以上ある場合、
年間数十万円〜100万円以上になるケースもあります。
つまり、この家庭では、
合計で年間150万〜200万円前後の年金が支給される可能性があります。
ただし、ここで大切なのは、
これだけで生活費すべてをまかなえるかどうかは別問題ということです。
例えば、住宅ローンや教育費、生活費を考えると、
「足りるのか?」「どれくらい補えばいいのか?」
という視点が必要になります。
- 遺族基礎年金: 令和7年度の基本年金額は定額で831,700円です。
- これに「子の加算(第1子・第2子は各239,300円)」がつきます。
- 子どもが2人の場合、遺族基礎年金だけで年間1,310,300円が支給されます。
- 遺族厚生年金: 会社員(第2号被保険者)であった夫の報酬に比例して計算され、
- 老齢厚生年金の報酬比例部分の「4分の3」が上乗せされます。
- 末子が18歳到達年度の末日を迎えると「子の加算」および「遺族基礎年金」の支給は終了しますが、
- その時点で妻が40歳以上65歳未満であれば、
- 65歳になるまで「中高齢寡婦加算(年額623,800円)」が支給され、
- 子育て後の生活をサポートする仕組みも用意されています。
【事例②:自営業の夫が亡くなった場合】
夫(自営業)
妻(専業主婦)
子ども1人(10歳)
この場合は、遺族基礎年金のみが対象となります。
年間約80万円+子どもの加算で、
おおよそ年間100万円前後が目安になります。
会社員と比べて、遺族厚生年金がない分、
受け取れる金額は少なくなる傾向があります。
この違いは、「どの年金制度に加入しているか」で大きく変わるポイントです。
【詳細】
- 自営業(第1号被保険者)の場合、遺族厚生年金の上乗せがないため、
- 「遺族基礎年金」のみとなります。
- ただし、第1号被保険者独自の給付として、
- 要件を満たせば「寡婦年金(夫が受け取るはずだった老齢基礎年金額の4分の3)」や
- 「死亡一時金」といった制度が用意されています。
次に、障害年金の事例です。
【事例③:病気で働けなくなった場合】
夫(会社員)
妻(パート)
子ども1人
夫が病気で長期間働けなくなり、障害等級2級に該当した場合、
障害基礎年金と障害厚生年金の両方を受け取れる可能性があります。
障害基礎年金は、年間約80万円前後に加え、子どもがいる場合は加算があります。
さらに、障害厚生年金は収入に応じて上乗せされるため、
合計で年間100万〜200万円前後になるケースもあります。
ここでのポイントは、
「亡くなったときだけでなく、
生きているけれど働けない状態にも備えがある」ということです。
- 障害基礎年金: 令和7年度の支給額は、
- 障害等級2級で831,700円、1級で1,039,625円です。遺族年金と同様に「子の加算」もつきます。
- 障害厚生年金: 会社員の場合、報酬比例の障害厚生年金が上乗せされるだけでなく、
- 等級が1級または2級で、生計を同じくする65歳未満の配偶者がいる場合には、
- 「配偶者の加給年金額(239,300円)」もさらに加算されます。
【事例④:若いときのケガや病気でも対象になる】
障害年金は、
先天的な病気や若い頃のケガが原因でも対象になる場合があります。
例えば、学生時代に初診日がある病気で、
社会人になってから症状が重くなり、
日常生活や仕事に制限が出た場合でも、条件を満たせば支給対象となることがあります。
ただし、ここで重要なのが「初診日」と「保険料の納付状況」です。
この2つを満たしていないと、対象外となるケースもあります。
- 障害年金を受け取るには通常「初診日前の保険料納付要件」が問われますが、
- 20歳前(学生時代など)に初診日がある場合は保険料の納付要件は問われず、
- 障害基礎年金を受給できる特例があります。
ここまで事例を見てきて分かる通り、
公的年金は「いざというときの大きな支え」になります。
一方で、家庭の状況によって
・受け取れる金額
・対象になるかどうか
は大きく変わります。
つまり、
「なんとなくある制度」ではなく、
「自分たちの場合はどうなるのか」を具体的に知ることが重要です。
まずは一度、
「もしものとき、わが家はいくら受け取れるのか?」
を考えてみてください。
そこから、「足りるのか」「何を準備するのか」が見えてきます。
公的保険アドバイザー FP熱田裕保